- 遺産に何があるかよく分からないのですが、どうしたらはっきりするのでしょうか。
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預貯金は金融機関に照会することができます。自分では十分な情報が得られない場合は、弁護士に依頼して弁護士会照会等を利用する方法もあります。不動産は名寄帳等から、株式は配当通知等の通知類から判明することがあります。銀行に貸金庫を借りていなかったか調べることで,新たな財産が判明することもあります。
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- 遺産に含まれる不動産や株式の価額はどうしたら分かるのでしょうか。
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不動産は不動産鑑定士に依頼するのが正確ですが、費用がかかります。固定資産税評価額、路線価、地価公示による公示価額、不動産業者による簡易査定書(近隣の取引事例等から評価を算定するものです。)を参考にして当事者間で合意してもよいでしょう。株式は、①上場株式は証券取引所で公表されている取引価格により、②非上場株式については、業種が類似する会社の上場株式取引価格を基準にして、資産内容、収益配当の状況を考慮して決める方法、会社の純資産額を発行株式数で除して1株あたりの評価額を求める等の方法があります。
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- 父が亡くなり、母と長男の私が相続しました。相続税を支払わなければならないのでしょうか。
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原則として、相続によって取得した財産(相続財産)のうち経済的価値のあるすべてのものが課税対象となります。課税対象となる相続財産の合計額を課税価格といい、この合計額が基礎控除額(3000万円+600万円×法定相続人数)を超える場合に、被相続人の死亡時の住所地を管轄する税務署に申告します。相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内に申告し、その期限内に納付しなければなりません。延滞すると、延滞税がかかります。遺産分割をしてから申告を行うことが原則ですが、期限内に遺産分割を終えられない場合は未分割のまま申告を行い,分割が完了した後に修正申告・更正請求をする方法もあります。
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- 夫が亡くなり、相続人は妻の私と2人の息子です。夫は弟さんに300万円貸していたのですが、これはどのように相続されるのでしょうか。
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金銭その他の可分債権は、相続開始とともに法律上当然分割され、各相続人はその相続分に応じて権利を承継するというのが判例です。
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質問のケースではあなたが150万円、お子さんたちがそれぞれ75万円の債権を取得し、単独で請求できることになります。
しかし、実際は遺産分割により債権の帰属者を決めるまで請求しないのが通常です。
- 夫と妻の私は2人で夫名義で借りた家に住んでいたのですが、夫が亡くなってしまったので出て行かなければならないのでしょうか。
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その必要はありません。借家契約は相続により従来の内容のまま相続人に当然に引き継がれます。家主の承諾は不要であり、名義書換料などは支払う必要はありません。借地の場合も同じです。
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- 内縁の夫が借りていた部屋に同居していましたところ、彼が亡くなりました。私は出ていかなければならないのでしょうか。
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出ていかなくてよい可能性が高いでしょう。パートナーの方に相続人がいない場合はあなたが大家さんに反対の意思表示をしないかぎり、パートナーの方の権利義務を承継できます(借地借家法36条)。相続人がいる場合でも、判例上、相続人が相続により取得した借家権を援用し家主に対し居住の継続を主張できます。相続人が賃借権を放棄してもあなたとの関係では無効であり、また相続人からの明渡請求は権利濫用として退けられる可能性が高いと思われます。
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- 夫が亡くなり、妻である私が生命保険金を受け取ったのですが、これも相続財産となるのでしょうか。
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受取人としてあなたが指定されているときは、保険金はあなた固有の権利として取得するので相続財産には含まれません。受取人が「相続人」と指定されている場合も、相続ではなく保険契約によって保険金を受け取るのであるから、相続財産に含まれないとするのが判例です。
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なお、相続人の一人が固有の権利として取得した死亡保険金等は特別受益に当たらないのが原則ですが、保険金の額、この額の遺産総額に対する比率等の事情に照らして、保険金受取人たる相続人と他の相続人との間の不公平があまりに著しいと評価される場合には、例外的に、特別受益に準じて保険金が持戻しの対象とされることもあります。
これに対し、受取人が亡くなった旦那さん自身となっている場合には保険金は相続財産となります。
- 夫が亡くなり妻の私と2人の息子が相続することになりました。夫は知人から400万円を借りていたのですが、これは私たちが支払うのでしょうか。
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可分債務は相続開始と同時に各相続人の相続分に応じて当然に分割承継されます(民法427条、判例)。よって可分債務は遺産分割の対象とならず、相続債権者は1人の相続人に対し全部請求することはできません。質問のケースでは、相続放棄をしない限りは、あなたが200万円、お子さん達がそれぞれ100万円ずつ債務を負うことになります。
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- 父が亡くなり、長男である私が喪主となって葬式を行ないました。とりあえず私が費用を払ったのですが、この分を遺産から出すことはできるのでしょうか。
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裁判例では、葬式費用は葬式主催者が負担すべきとされています。もっとも,他の相続人との協議によって,まず香典を葬式費用の一部に充て,不足分については相続財産に関する費用として相続財産の中から支払うとすることも少なくありません。
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- 夫が亡くなりました。夫には、妻である私のほか、私との間の子が2人、愛人との間の子が1人います(認知はされています)。また夫のお父様とお母様も健在で、義兄もいます。誰が相続できるのでしょうか。
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あなたと2人のお子さん、愛人との間の子の4人が相続人になります。
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配偶者は常に相続人になります。配偶者以外の血族は、①子②直系尊属③兄弟姉妹の順序で相続人になります。子には養子も含まれます。
また、被相続人よりも先に、相続人となるべき子及び兄弟姉妹が先に亡くなっていた場合は、代襲相続の問題が生じます。
- 前のケースで、各相続人はどれくらいの割合で相続できるのでしょうか。
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相続分(遺産を承継する割合)は、相続人が①配偶者と子の場合は各2分の1、②配偶者と直系尊属の場合は配偶者が3分の2で直系尊属が3分の1、③配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合は配偶者が4分の3で兄弟姉妹が4分の1となります(民法900条)。同じ立場の相続人が数人ある場合はその内で頭割りになります。
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質問のケースでは、相続分は、あなたが2分の1、あなたのお子さん、愛人の子がそれぞれ6分の1となります。平成25年9月4日以前は婚姻外で生まれた子の相続分は他の子の2分の1とされていましたが,平成25年9月4日の最高裁判決により、婚姻外で生まれた子の相続分は他の子と同じに変更になっています。
- 長男には借金問題や女性問題で迷惑をかけられっぱなしなので、遺産を渡したくないのですが、できますか?
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できる場合もあります。家庭裁判所に推定相続人の廃除を請求します(民法892条)。廃除原因(被相続人に対する虐待または重大な侮辱、その他の著しい非行)があると裁判所に認められると、長男の相続人資格が失われます。廃除原因の有無は、虐待・侮辱・非行の程度、当事者の社会上の地位、家庭の状況、教育制度、被相続人側の責任の有無、その他一切の事情を斟酌して家庭裁判所が決定します。金品の持出しや多額の借金、サラ金の後始末をさせて行方不明になっているケースで廃除を認めた審判例もあります。請求は被相続人であるあなたにしかできません。遺言によって廃除することもできます(同法893条)。もっとも、廃除の判断は慎重になされるため、実際に認められるケースは少ないようです。
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なお、長男に子供がいれば、その子が相続人となります(代襲相続)。
- 夫が亡くなりましたが、銀行やサラ金に借金があり、サラ金業者から支払を請求されています。とても支払のできる額ではないのですが、どうしたらよいでしょうか。
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第一に,相続放棄(民法938条)という方法があります。債務は相続開始と同時に各相続人の持分に応じて当然に分割承継されますが、相続放棄をすれば、その相続に関し、初めから相続人でならなかったものとみなされます。その結果,相続債務を負担することはなくなります。なお,相続放棄は,自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月の熟慮期間内に,家庭裁判所に申述して行なう必要があります。
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第二に,質問のケースのように負債の額が資産の額を上回る場合や,負債の総額がどのくらいかわからない場合などには,資産の範囲内でのみ負債を返す限定承認(民法922条)という方法もあります。
もっとも,相続人が複数いる場合、相続放棄は各相続人が単独で行うことができますが、限定承認は全員が共同で手続を行わなければなりません(既に相続放棄を行った相続人がいる場合はその者を除きます。)。
限定承認の申述を行い,家庭裁判所が限定承認申述受理の審判を行った後は,相続債権者・受遺者に対する請求申出の催告の官報公告を行った上,財産の換価(原則として競売による必要があります。)を行い,債権者への配当弁済を行う必要があります。その上でなお遺産が残っている場合,相続人間で遺産分割を行うことになります。
加えて,限定承認を行った場合,被相続人に対して,全ての資産を時価で売却したものとみなして,譲渡所得の課税が行われ(所得税法59条),準確定申告を行う必要が生じることがあります。
以上のような諸々の手続が必要となりますので,弁護士にご相談ください。
- 1年前に夫が亡くなりました。遺産など何もないと思って特に手続きをしていなかったのですが、今になって、貸金業者から借金の返済の請求がきました。私の支払える金額ではありません。どうしたらよいでしょうか。
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相続開始からすでに3ヶ月が経過していますが、質問のようなケースで相続放棄を認めないのは酷な場合もあります。そのため判例では、相続が開始したこと及び自己が相続人になったことを知った時から熟慮期間が進行するのが原則としながら、相続人に相続財産の有無の調査を期待することが著しく困難な事情があって、相続人が相続財産(債務を含む)が全くないと信じるについて相当な事由があると認められる場合には、例外的に、相続人が相続財産があることを認識したとき,もしくは通常そのことを知ることができるときから熟慮期間が始まるとされています。質問のケースでも、債権者の通知が遅れたこと、夫婦の関係性、生活状況などを考慮して、まだ熟慮期間が経過していないと認められる可能性があります。そうすれば,相続放棄を行い,債務の支払を拒否することができます。
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なお、経過によっては、相続放棄が受理された後に債権者からその効力を争われる場合もありえます。
- 父が亡くなり、私と妹、弟の3人が相続することになりましたが、妹は結婚のときに、弟は留学費用として、それぞれ100万円を超える額をもらっていました。遺産分割ではこれらが考慮されますか。
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被相続人から遺贈や生前贈与を受けた特別受益者に対しては、その受けた利益の限度で相続分を差し引き計算する(持戻)よう求めることができます(民法903条)。特別受益となるのは、共同相続人の一部の者が受けた①すべての遺贈と②婚姻・養子縁組のためもしくは生計の資本としてもらった生前贈与です。結婚にかかるお金のうち、結納金・結婚式の費用は通常特別受益にあたりません。弟の留学費用については生計の資本といえず、特別受益にあたらない可能性が高いと考えられますが、兄弟間に教育費用についての格差が著しい場合は特別受益にあたる余地があります。
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- 父は、7年前に脳卒中で倒れて以来寝たきりとなり、長女の私が介護をしていましたが、先日亡くなりました。他の兄弟は遠方に住んでいるため、私一人で介護しました。このような事情は相続では考慮されますか。
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被相続人の財産の維持・形成に特別の寄与・貢献をした共同相続人は、これに応じた金額を遺産分割において反映することができます(民法904条の2)。ただし、「特別の」寄与には、親族間の扶養義務等法律上の義務の履行としてなされる行為は含まれません。そのため、介護をしたことでただちに特別の寄与が認められるものではなく、扶養義務の範囲を超えるといえるだけの具体的な介護の内容やそれによって免れた支出の内容などを主張する必要があるでしょう。
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- 父が亡くなって、遺産があるようなのですが、遺産の分割はどのようにして行なえばよいのでしょうか。
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通常は共同相続人が一同に会して協議をし、合意の上遺産分割協議書を作成します。持ち回りで遺産分割協議書を作成することも可能です。合意があれば法定相続分と異なる分割もできます。
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遺産分割協議書は、合意が成立した証拠資料となり、不動産については登記原因を証する書面となるため,作成しておくことが望ましいです。また,作成にあたっては,登記手続や金融機関等での手続において必要となることから,実印で押印の上,印鑑登録証明書を添付しておくとよいでしょう。
- 共同相続人の一人である弟は、数年前から音信不通となっているのですが、遺産分割協議はどのようにしたらよいのでしょうか。
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遺産分割協議を成立させるためには,全ての共同相続人において合意をする必要があります。したがって,家庭裁判所に不在者財産管理人の選任(民法25条)を申し立て、選任された管理人と遺産分割について協議することを検討する必要があります。ただし,不在者の法定相続分は,不在者財産管理人に管理を委ねることになります。
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仮に弟さんの生死が7年間以上明らかでない場合には、家庭裁判所に申し立てて失踪宣告(民法30条)の審判をしてもらうと、弟さんは死亡したものと扱われます。この場合弟さんにさらに相続人がいればその方と遺産分割協議をします。
遺産分割終了後,弟さんの生存が確認された場合には失踪宣告は取り消されることになりますが、他の相続人が弟さんの生存を知らなかった場合,遺産分割は有効です。ただし,遺産分割によって得た利益が手元に残っている場合には,返還しなくてはなりません。
- 父が亡くなった後、兄から、相続登記のために必要だからと、「相続分のないことの証明書」に判を押すことを求められています。押してしまったら遺産は一切もらえないんでしょうか。
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もらえなくなることもあります。相続を望むなら署名押印はしないでください。この証明書は、登記実務上、相続登記をするについての原因証書として扱われていますので、この書面を添付して、お兄さんが自己名義に相続登記を行なうよう申請すれば相続登記をすることができます。そこで、共同相続人から単に登記のために必要だからと説明されて、法的意味を考えずに安易に押印してしまい、後日になって紛争に発展する例も少なくありません。裁判例には、このような証明書を本人の意思に基づかないものとして無効としたものもありますが、実質的な遺産分割協議がなされ、その過程で遺産に対する共有持分権の放棄または贈与がなされたとみて有効としたものもありますので、安易に署名押印してはいけません。
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- 共同相続人全員で集まって何度か話したのですが、どうしても話がまとまりません。どうしたらよいでしょうか。
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相手方の住所地の家庭裁判所に調停の申立てをして合意形成を目指す方法があります。共同相続人のうち誰が申し立ててもよいのですが、全員が当事者となっていなくてはなりません。調停で合意が成立せず,かつ遺産の範囲等が定まっている場合には審判手続に移行し、家事審判官が審理したうえで強制的に分割するということになります。
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- 遺産分割の調停が始まるのですが,調停はどのように進んでいくのでしょうか。
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調停においては,当事者だけで話し合うのではなく,第三者である裁判所の調停委員が間に入って進行していくことになります。進行にあたっては,当事者全員が同席して説明を受けることもありますが,それぞれ(あるいは立場や主張が近い方ごとに)別々に調停委員が事情を聞き取り,協議を進めることもあります。
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調停は,あくまでも話合いの場となるため,合意ができない場合には,調停での解決はできないこととなります。その場合は,「審判」手続に移行して,裁判所が判断をすることとなりますが,少なくとも,相続人の範囲や遺産の範囲について合意ができている必要があり,これらの点が定まっていない場合には,原則として審判に移行することができません。この場合には,別途訴訟によって確定することが必要となります。
また,不動産その他の遺産の評価が合意できない場合に審判に移行するためには,裁判所から鑑定を行うこと等を求められることもあります。
- これまで,相続人同士の話合いでは,お互いに好き勝手な主張を言ってしまい,なにも整理がされないままでした。遺産分割の調停においては,どのように整理がされるのでしょうか。
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遺産分割の調停においては,一般的に,次の順番で問題点の整理がされることが多いです。
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①相続人が誰か,②遺言があるかどうか,といった点を確認のうえ,③遺産にはどのようなものがあるか(遺産の範囲の整理),④遺産の評価額はどうか,⑤特別受益や寄与分があるか,といった点を整理した上で,⑥遺産をどのようにわけるのかについての合意を目指すこととなります。
以上の各段階において,話し合いの後戻りを防ぐために必要に応じて,中間合意の調書が作られることもあります。
- 兄が姉の住所地を管轄する横浜家庭裁判所に遺産分割調停の申立てをしたのですが、私は遠方に住んでいるため出席するのが大変です。どうしたらよいでしょうか。
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調停には本人が出頭するのが原則ですが、代理人のみによる出頭や事情により電話会議の方法で対応することができます。弁護士以外の者を代理人に選任するには家庭裁判所の許可が必要となります。
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- 私の死後、子どもたちの間で相続争いが起こらないように、遺言を書いておきたいのですが、どのように作成したらよいのでしょうか。
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普通方式の遺言には自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があります(民法967条)。自筆証書遺言は遺言者が遺言の全文、日付、氏名を自書し、押印するだけで作成でき(民法968条1項)、最も簡単です。もっとも、自筆証書遺言では厳格な方式が定められていますので,日付がない,押印がないといった基本的な方式の不備によって無効となる可能性があります。また,内容が不明確のため相続人間で遺言の解釈で争いが生じたり,意思能力の有無をめぐって遺言の有効性が問題となる可能性もあります。
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したがって,相続人間でそのような争いが起きるのを予防するという観点からは,遺言者が証人2名以上の立ち会いの下,法律の専門家である公証人の面前で遺言の趣旨を口授する公正証書遺言を作成する方がよいでしょう(民法969条)。また,遺言の内容としては、各相続人の遺留分に配慮した遺言にしておけば、相続をめぐる紛争を予防することができるでしょう。
- 父が亡くなり、遺品を整理していたら「遺言書」と書かれた封筒が出てきました。封がしてあるのですが開けてしまってよいのでしょうか。
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開けてはいけません。遺言者の相続開始地(被相続人の住所地)の家庭裁判所に提出して検認の手続をとります(民法1004条)。封のしてある遺言書は、家庭裁判所において、相続人またはその代理人の立会いの下でなければ開封することができません。検認を怠った場合や,家庭裁判所外で開封をした場合には5万円以下の過料に処せられることがあります(同法1005条)。
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- 父の遺言には、「土地は息子(私)に相続させる」と書いていました。この遺言だけで私はその土地を自分名義に書きかえることができますか。
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できない可能性もあります。原則は,遺言で不動産を相続する場合,相続人は遺言書をもって単独で相続登記を行うことができます。もっとも,登記を受け付ける法務局は形式的な審査権しかないため,遺言書に記載されている不動産の特定性が欠ける場合には,登記を行うことができないこともあります。
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本件の場合,「土地は」としか記載がなく,どの不動産を指すのかが不明確であり,特定性に欠けるため,遺言書のみで単独で相続登記を行うことができない可能性があります。
- 夫は5年前に家を出て、マンションを買って不倫相手といっしょに住んでいました。最近夫が亡くなり、不倫相手にそのマンションを遺贈する旨の遺言をしていたことが分かりました。マンションは不倫相手にあげなければならないのでしょうか。
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マンションの遺贈が有効と判断される可能性もあります。判例には、①遺言者と配偶者の関係・遺言者と愛人の関係、②遺言によって不倫関係が助長強化されたか、③遺言内容と配偶者の生活関係等を斟酌したうえで、遺言が不倫関係を維持継続することを目的とするものではなく、もっぱら遺言者に頼っていた女性の生活を保全するためになされたものと認めて、有効としたものがあります(最一小判昭和61年11月20日)。
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質問のケースでも、不倫関係が始まった頃にすでに婚姻関係は破綻していたこと、遺言は夫の死亡直前に不倫相手に対する経済的後始末としてなされたこと、マンションの遺贈は妻子の生活を侵害しないこと等の事情があれば、遺贈は有効となるでしょう。なお、遺贈により遺留分が侵害される場合は、遺留分減殺請求をすることができます。一方で、不倫相手に対する遺贈が反社会性を有している場合には、公序良俗違反で無効(民法90条)となる場合があります。
- 母親が亡くなり,相続手続きのために預貯金の取引履歴を取り寄せたところ,母親と同居していた兄が,母親の存命中に預貯金500万円ほどを無断で引き出して浪費していた疑いが発覚しました。母親の相続人は兄と私の2人です。相続手続きの中で,何かできることはないでしょうか。
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遺産分割協議やその調停の中で,お兄さんとお話し合いができれば,例えばその500万円をお兄さんが遺産から先取りして貰ったものとして扱う等の対応をすることが考えられます。しかし,お話し合いでの解決が難しいことも多く,その場合には,地方裁判所に,不当利得返還請求訴訟を提起する必要があります。あなたの方で,お兄さんが引き出した500万円は,お母さんには無断であったこと等を証明し,その半分の250万円の支払いを求めることが想定されます。ただし,同居しているような場合など,引き出したことがお母さんに無断であったことの立証が困難な場合もあります。
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- 父が死亡し、相続人は私と兄の二人です。父は生前に遺言書を書いており,遺言書では父親の財産は全て兄へ相続させるとなっていました。私は,父の相続では何も権利がないのでしょうか。もし,何らかの権利があるとすれば,どのように行使すれば良いのでしょうか。
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民法は兄弟姉妹を除く相続人に対し,遺産を最低限度取得できる権利を認めており,これを「遺留分」といいます。
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遺留分を侵害された者(遺留分権利者)は,遺留分を侵害した者(遺留分義務者)に対し,自己の遺留分を請求(遺留分減殺請求/2019年7月1日以降に相続が発生したものについては遺留分侵害額請求)することができます。但し,遺留分は,相続開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から一年以内に行使しなければならない点に注意が必要です。行使方法は,意思表示の方法によればよく,必ずしも訴えの方法によることを要しませんが,期限内に行使したことを明確にするために,内容証明の方法によることが望ましいでしょう。
質問のケースでは,相続人は子2名のため,遺留分割合は4分の1となります。お兄さんに対し,内容証明等で遺留分減殺請求(遺留分侵害額請求)を行い,4分の1の遺留分を請求していくことになります。
- 私は夫婦2人だけで子どもがいません。私は結婚してから兄弟とは疎遠で,私が死んだときは,財産は妻へ全てあげたいと考えています。私が死んだら,兄弟も法定相続人となると聞きましたが,妻へ財産を全部あげるためにはどうすれば良いのでしょうか。
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兄弟姉妹には遺留分が認められていません(民法1042条1項)。したがって,生前に一切の財産を奥様へ相続させる旨の遺言を作成しておくことで,死後に奥様へ全ての財産を取得させることができます。
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- 父の相続人には,母と私を含め2人の子がいます。父は,自分が死んだ後残される母を心配していて,一切の財産を母へ相続させる旨の公正証書遺言を作成しています。私は,特に文句はないのですが,父は私たちが母へ遺留分を請求することを心配しています。父の心配を解消する方法はあるのでしょうか。
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被相続人の生前に,遺留分を放棄することが可能です(民法1043条1項)。但し,遺留分の放棄が濫用されないように,相続開始前に遺留分の放棄は,家庭裁判所の許可が必要です。家庭裁判所の許可にあたっては,以前に多額の援助を受けている,放棄者の生活が安定している等の状況も考慮されます。
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なお,遺留分権利者の一人が遺留分を放棄したとしても,他の共同相続人の遺留分が増加するものではありません(1043条2項)。
- 父が亡くなり,相続人は私と兄の2人です。兄は,9年前に脱サラしてラーメン店を始めたのですが,その際,父から事業資金として2000万円を援助して貰っています。父は長く入院し,多額の医療費がかかっていたため,父の遺産は400万円しかありませんでした。私は,兄に対して,遺留分を請求することはできるのでしょうか。
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共同相続人の1人に対してされた生前贈与で特別受益にあたるものは,これまでは贈与された時期如何に関わらず遺留分算定の基礎財産に算入されていました。相続法の改正によって,2019年7月1日以降に発生する相続に関しては,遺留分算定の基礎財産に算入される生前贈与は,10年以内に行われたものに限られることになりました。
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質問のケースでは,お父様がお兄さんへ援助したのが9年前ですので,現行でも改正後でもいずれも遺留分算定の基礎財産として算入されることになります。
具体的には,相続人は子2名のため,遺留分割合は4分の1となります。遺留分算定の基礎財産は,お兄さんへ生前贈与した2000万円+遺産400万円=2400万円となり,その4分の1である600万円が遺留分額となります。そのため,遺産の400万円を取得し,遺留分に不足する200万円をお兄さんに請求することができます。