父が亡くなった後、兄から、相続登記のために必要だからと、「相続分のないことの証明書」に判を押すことを求められています。押してしまったら遺産は一切もらえないんでしょうか。
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もらえなくなることもあります。相続を望むなら署名押印はしないでください。この証明書は、登記実務上、相続登記をするについての原因証書として扱われていますので、この書面を添付して、お兄さんが自己名義に相続登記を行なうよう申請すれば相続登記をすることができます。そこで、共同相続人から単に登記のために必要だからと説明されて、法的意味を考えずに安易に押印してしまい、後日になって紛争に発展する例も少なくありません。裁判例には、このような証明書を本人の意思に基づかないものとして無効としたものもありますが、実質的な遺産分割協議がなされ、その過程で遺産に対する共有持分権の放棄または贈与がなされたとみて有効としたものもありますので、安易に署名押印してはいけません。