遺産が少ないと「争族」になりやすい 本日日経記事について
弁護士による相続対策相続後の財産管理
本日の日経の前記記事について、何点か疑問があります。
1つ目は、遺産が少ないと「争族」になりやすいと断言している点です。
一般的に、遺産が少ない場合は争う財産が少ないので争わず解決することが多いのが現実で、圧倒的に争いになる割合は少ないといえると思います。
記事の根拠として、家裁の遺産分割事件で、5,000万円以下が8割弱というのは事実でしょうが、相続が始まって遺産分割事件になるケースはまれです。
このまれなケースを論拠に「争族」になりやすいと断言することはどうかと思います。
遺産が少なくても「争族」になることがあるというなら納得します。
2つ目は、大きな相続では小規模宅地の特例が使えるので、相続税の納付期限までに相続をまとめようとするが、遺産額が少ないとこの動機が働かず、「やる気」もでないと言っている点です。
まず、小規模宅地の特例は、納付期限を過ぎても適用可能です。
相続の争いが起きるのは、相続人間の関係が悪いケースですので、
相続申告期限には、未分割で申告するケースが多いかと思います。小規模宅地の特例が使えるか使えないかで争いが増えることはありません。
大きな相続では、小規模宅地の特例は大きな減税点にはなりませんし、小規模宅地の特例で全体の相続税は下がりますが、相続人間に争いに影響はないものと思います。
3つ目は、不動産を分割する方法として4つ方法を紹介しています。
・現物分割
・代償分割
・換価分割
・共有分割
確かに、このような方法がありますが、その順序や評価が説明不足のようです。
争いのある相続人に共有させる方法は適切ではありません。
争いがあるから、共有にしておくかという安易なものではありません。
また、現物分割、代償分割、換価分割の順序や要件については、私たち弁護士が最も頭を悩ます問題です。
この順序と要件については、 後に詳しくご紹介したいと思います。
この記事の筆者のいいたい気持ちは理解できますが、誤解を与えているなら、問題でしょう。