遺産分割審判手続きは相続手続きの究極の解決手段です。
遺産分割審判手続きの重要さ
遺産分割手続きにおいて,遺産分割審判手続きは,民事手続きの判決に相当するものなので,相続手続きの究極解決手段です。
しかし,相続手続き全体で,遺産分割手続きの解決手段では,最後の方法であり,その数は多くはありません。民事裁判で,判決に至るものは,和解で解決するものと比べ,少ない。同様に,遺産分割審判での解決に至るものは,遺産分割調停や,遺産分割調停前の話し合いでの解決と比べ,遙かに少ないのが現状です。それは,親族間の争いなので,話し合いで解決したいと考えている人が多い,裁判所も当事者も,遺産分割手続きでの解決に熱心であることによります。親族間の争いは骨肉を争うと言われるほど酷いものも多いのですので,遺産分割審判での解決をもっと利用したほうが,早い解決や,適正な解決に結びつく事例も多いかと私は思います。審判手続きは,裁判官が唯一,直接遺産分割事件に係わる手続きであり,裁判官の公正な判断が期待され,早期の解決も期待される手続きなのです。
遺産分割審判手続きで解決した事例
1 裁判官が手続き進行に関与
遺産分割事件で難航する事件として,相続財産を明らかにしない場合と相続財産の評価の鑑定を行ってくれない事件がありました。
相続財産のうち,不動産は名寄せ帳等で,明らかになるケースは多いですが,預貯金は,積極的に明らかにされないケースも多いため,遺産分割事件が膠着状態になるケースも多いです。
このような事件の場合,裁判官が積極的に釈明権を行使し,残高証明や預金通帳の写し,申告書の提出を促したりしてくれます。
また,不動産の価格に隔たりがある場合は,鑑定を積極的に進め,不動産の範囲と価格を明確化してくれました。
このような手続きは,遺産分割調停ではなかなかスムーズにいかず,時間ばかりかかることになります。
通常,遺産の範囲と価格について,遺産分割調停でまとまらないと,審判手続きに回してもらえないのですが,一方当事者の頑な手続きに対する非協力があった場合でも,裁判官の訴訟指揮によって,遺産分審判の基礎を作ってもらうこともできます。
2 遺産の範囲と価格の評価が合意されていても,様々な特別受益や寄与分の主張で大きく争いのある場合や,不動産の分割方法と,価格代償金の定め方については,争いが酷い場合ほど,合意ができる見込みは薄いので,遺産分割審判で決していただかなくてはならない場合も多いです。このようなあらゆる争いがある場合でも,審判で判断されれば,解決します。
3 遺産の範囲と評価がやっと合意されても,分け方について,当事者の同意が得られない場合など,手続きに非協力な相続人がいても,審判によって,適正な遺産分割が実行されることができます。
このように,非常に難解な人間関係や,財産関係で,絶対に遺産分割の合意ができない場合であっても,終局的には,審判で解決できることを知っておいてもらいたいと思います。