被相続人には妻及び子がいたものの,債務超過のためいずれも相続放棄しており,被相続人の直系尊属も既に死亡していたため,相談者が相続人となっていました。
被相続人の死亡後数年後に,相談者が一般人から被相続人の生前に取得した判決に基づいて金銭の支払を請求されたという事案。
【相続放棄】 相続放棄の熟慮期間の起算点を債権者からの請求時として、相続放棄が受理された事案
相談者:被相続人の兄弟
■ 事案概要
■ 経過及び解決のポイント
相談者は,被相続人の死亡は知っていたものの,被相続人が金銭の支払義務を負っている事実や被相続人の子がいずれも相続放棄をした事実を知りませんでした。
そこで,相談者から詳しく事情を伺い,被相続人の生前の兄弟間の関係や被相続人の妻・こどもとの関係が蜜ではなかったこと等,被相続人の債務の存在や子供の相続放棄の事実を知り得ない事情を報告書・陳述書の形でまとめ,相続放棄の熟慮期間の起算点を債権者からの請求時であると主張したところ,相続放棄が受理されました。
<Q&A>相続放棄っていつまでできるの?
相続人は,原則,自己のために相続の開始があったことを知った時から3箇月以内に,相続放棄をしなければなりません(民法915条)。
ただし,被相続人の死亡の事実を知っている場合であっても,被相続人に相続財産が全く存在しないと信じ,かつ,被相続人の生活歴,被相続人と相続人との間の高裁状態その他諸般の事情があって,相続人がそのように信じるについて相当な理由があると認められる場合には,熟慮期間は相続財産の全部又は一部の存在を認識した時又は通常これを認識し得べき時から起算すべきとされています(最判昭和59.4.27民集38巻6号698頁)