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相続人の一人と連絡が取れない場合の相続手続


一部の相続人と連絡がとれなければ遺産分割協議ができず、相続手続が滞ってしまいかねません。

しかし、そのような場合でも裁判所の手続を利用することで遺産分割協議を進めることが可能になります。

本記事では、遺産分割協議をしないことによるデメリットを確認した上で、相続人の中に不在者・行方不明者がいる場合の対応について解説します。

 

1 遺産分割協議をしないことによるデメリット

遺言が存在しない場合、誰が何を取得するかについて相続人全員が話し合って決めなければなりません(遺産分割協議)。

仮に、連絡が取れないことを理由に一部の相続人を除外したまま協議を行ったとしても、その遺産分割協議は無効となります。

つまり、法定相続人を一人でも欠いた状態では遺産分割協議を進めることができず、遺産分割協議書を作成することもできません。

そして、遺産分割協議書がなければ、不動産や有価証券、自動車(軽自動車は除く)等について特定の相続人への名義書換を行うことができません。

また、相続税の申告において、配偶者税額軽減や小規模宅地等の特例を利用することもできません。

さらに、遺産分割協議ができないでいる間に別の相続が発生してしまうと、共有関係となる相続人が更に増えることになり、全員での協議自体や合意形成が一層難しくなってしまいます。

 

しかし、連絡が取れない相続人がいる場合でも、諦める必要はありません。

以下のような手続をとれば、遺産分割協議を進行させることが可能となります。

 

2 連絡が取れない相続人がいる場合の対応

まずは「相続人の調査」を行い、所在を探すことが考えられます。

それでも所在がわからない場合、裁判所に対して「失踪宣告の申立て」や「不在者財産管理人選任申立て」を行うという手段があります。

また、相続人の一部と連絡が取れないまま、相続開始から10年以上が経過してしまったような場合には、2023年4月1日に施行された「所在等不明共有者持分取得申立て」という手続を利用することもできます。

 

それぞれの概要や注意点について見ていきましょう。

 

(1)相続人の調査 | 戸籍の附票の取得

手紙や電話・メール等の連絡手段がなく、あるいは全て音信不通のため今どこにいるのかわからないという相続人については、本籍地の市区町村から戸籍の附票を取り寄せることから始めます。

戸籍の附票とは、その人の住所の変遷を記録したものです。

本籍地の市区町村において戸籍原本と共に保管されている書類であり、戸籍作成時から現在に至るまでの住所が記録されています。

なお、そもそも不明者の本籍地すらわからないという場合でも、被相続人の戸籍謄本や除籍謄本を追う過程で、不明者の本籍地が判明することがあります。

ただし、不在者本人以外に取得できるのは、配偶者や直系親族のみに限られているため(住民基本台帳法20条)、それ以外の方が請求する場合は、弁護士等を依頼して「職務上請求」を行う必要があります。

 

各種社会保障を受けるためには各自治体に住民登録していることが必要ですし、また、住民票異動が放置されているような場合でも、例えば運転免許証の更新手続を現住所地で行うためには住所変更が必要となるので、そのタイミングで住民票異動を行うというケースもあります。

従って、戸籍の附票を取得すれば、多くの場合現住所を知ることができるはずです。

 

【所在が判明した場合 | 遺産分割協議・調停・審判】

現住所がわかれば、手紙等を用いてコンタクトをとり遺産分割協議への参加を求めます。

相手が頑なに参加を拒む場合は、家庭裁判所での遺産分割調停、次いで審判の諸手続を検討しましょう。

これにより、参加している相続人だけで遺産分割の手続を進めることが可能となります。

 

【注意点】

本人が市区町村への住民登録を行っていない場合、戸籍の附表を取得しても現住所を把握することができません。

この場合に、次の(2)以下の手続を検討することになります。

 

(2)失踪宣告の申立て

連絡の取れない相続人の生死が7年を超えて明らかでない場合には、配偶者や相続人等の利害関係人が家庭裁判所に対して失踪宣告申立て(普通失踪)を行うことを検討します(民法30条1項)。

申立てが認められれば、その者を死亡したものと扱い、遺産分割協議を進めることが可能となります。

地震などの天災、戦争、海難事故等の危難に遭遇した者について、死亡が確認できないまま1年を経過した場合(特別失踪)も同様です(同条2項)。

例えば、100歳を優に超えているはずであるものの、死亡届は出ておらず生死も住所も確認できないという場合であっても、失踪宣告を申し立てない限りは死亡したとみなすことはできません。

なお、戸籍法の手続として、「高齢者につき死亡と認定」と記載し除籍することができる「高齢者職権消除」という制度がありますが(戸籍法44条3項、24条2項)、あくまでも行政庁の内部処理に関する制度であり、これをもって法律上死亡したとみなすことはできません。

なお、失踪宣告が認められた場合、その人が死亡したとみなされる時点は、普通失踪の場合は最後の音信から7年を経過した時、特別失踪の場合は危難が去った時です。

 

【注意点】

・新たな相続人の出現

失踪宣告が認められればその相続人は亡くなったものとして扱われますが、その子供等行方不明者の相続人が存在する場合は、その人も遺産分割協議に加えなければなりません。

 

・急ぐ場合には不向き

申立てから失踪宣告まで1年以上を要することが多いため、相続税の申告期限(死亡後10か月)に間に合わせたい等遺産分割を急ぐ場合には向いていません。

このような場合には、次の不在者財産管理人の申立てを検討します。

 

(3)不在者財産管理人の選任申立て

生死不明であるものの失踪宣告の要件(とくに期間)を満たさない場合や、心情的に死亡したとみなすことに抵抗がある場合などには、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任申立てを行うことを検討します。

不在者財産管理人は、基本的には財産管理のみを行うという立場ですが、家庭裁判所に「権限外行為の許可」を申請することにより、不在者に代わって遺産分割協議に参加することができるようになります(民法28条)。

不在者財産管理人は、弁護士等の専門家以外にも親族が選ばれることもありますが、遺産分割協議に参加する他の共同相続人が就任することはできません。

 

【注意点】

・申立て時の予納金の負担

不在者財産管理人が報酬請求をした場合、家庭裁判所の判断で不在者の財産から報酬が支払われることになります(民法29条2項)。

このため、不在者の財産が少額である場合や、不動産など報酬支払いに不向きな財産しか存在しない場合には、申立ての段階で裁判所に100万円程度の予納金を支払うという負担が生じます。

ただし、遺産分割協議により不在者が相当程度の遺産を取得することが見込まれる場合などには、申立て時に事情を説明することで予納金が減免されることもあります。

 

・不在者の法定相続分の確保

不在者財産管理人が遺産分割に参加する場合、不在者の取得分が法定相続分を下回る内容の遺産分割を行うことは、原則として認められません。

従って、不在者財産管理人申立てを検討する際には、不在者については法定相続分を確保する必要があるということを予め考慮する必要があります。

 

・失踪宣告申立ての必要性

ひとたび不在者財産管理人が選任されると、その財産管理業務は遺産分割協議終了後も継続するのが原則です。

これにより、不在者財産管理人の報酬も発生し続けるという事態が起こりえます。

なお、遺産分割協議による不在者の取得額が100万円にも満たないような場合には、他の共同相続人に「不在者が帰来したときは責任をもって〇〇円を交付します。」といった印鑑証明書付き誓約書を提出させ(帰来時弁済)、遺産分割終了後に

「管理財産なし」を理由として不在者財産管理人選任審判を取り消すという方法も考えられます。

しかし、そのような事情がなければ遺産分割終了後も財産管理業務が継続してしまうため、いずれかのタイミングで失踪宣告申立てをするということを検討しなくてはなりません。

 

(4)所在等不明共有者持分取得申立て

相続財産の中に不動産が存在するケースで、相続人の所在を知ることができない場合、地方裁判所に対し、所在不明者の持分を自分が取得することを求める旨の申立てを行うができます(民法262条の2)。

令和5年4月1日から施行された新制度であり、相続開始から10年以上経過していることが条件となります。

 

【注意点】

・申立て時の供託金の負担

申立人は、裁判所が定める金額を供託する必要があるため、持分評価額に関する資料の提出や、供託手続を行う等の負担が生じます。

 

(5)持分の売却

以上のような裁判所を介する手続の他、遺産分割未了の財産が不動産なのであれば、自分の共有持分だけを業者に売却するということも可能です。

ただし、共有持分の買取り対応をしてくれる業者はそれほど多くありませんし、買取金額も低く抑えられる傾向にあるためほとんど利益にならないケースも多いようですが、場合によっては利用するのも一つの方法です。

 

3 まとめ

戸籍の附票の取寄せ、失踪宣告申立て、不在者財産管理人選任申立てなど、いずれの方法をとるべきかは事案によって異なり、中には個人の方が対応するには難しい手続もあります。

まずは方法選択のご相談から受け付けております。

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