遺留分と事業承継 |横浜・日本大通り 相続・遺産分割・遺言・遺留分の無料相談

メール予約も受付中
0120-150-833

[受付時間] 平日 9:30 ~ 19:00

遺留分と事業承継


相続を利用した事業承継では後継者である相続人に遺産を集中させることになります。

しかし、その結果、他の相続人による遺留分侵害額の請求を招いては円滑な事業承継が果たせません。

本記事では遺留分対策を念頭に置いた事業承継の施策を紹介し、遺留分に関する民法特例についても解説していきます。

 

1 事業承継における遺留分リスク

遺留分は一定の相続人に認められた法的権利である以上、遺言によって相続分を指定する場合は遺留分侵害額請求のリスクは念頭に置かなくてはなりません。

ことに事業承継が絡む場合の遺留分は、通常の相続の場合と比べて次の点で異なります。

 

(1)遺産の評価額が大きい

現経営者が所有する事業用財産の例としては、自社ビル用地や株式があります。

不動産はそれ自体の価値が高い上に、商業に有利な立地となれば評価額も当然高くなります。

また自社株式については「業績好調で内部留保が大きい」という一見望ましい状況の会社ほど評価額が高くなるというジレンマがあります。

そして遺産の評価額が高くなれば相続人一人当たりの遺留分も増加するわけですが、仮に遺留分侵害額請求された場合は後継者が相応の金銭を準備しなくてはなりません。

後継者にその支払能力がなければ、承継した事業用財産を処分するという事態に追い込まれてしまいます。

 

(2)経営介入

そこで相続人らに公平に分けるという方法をとれば遺留分リスクはなくなるでしょう。

しかし遺産に自社株が含まれる場合は株式も他の相続人に渡ることになり、結果、後継者による会社支配力が弱まってしまいます。

経営の安定を目指すには株式など「分けてはならない財産」があるのです。

 

2 円滑な事業承継の施策

相続は資産の分散化、遺留分はその確保、これに対して事業承継は後継者への資産の集中を目的とします。

つまり相続による事業承継ではこれら相反するニーズを調和させなくてはなりません。

現経営者の個人財産が株式に偏っていなければこの調和をとるのにさほど困難はありませんが、個人財産が経営する会社の株式だけという場合、後継者の支配株式保有のための施策は非常に難しいものとなります。

そこで円滑な事業承継を実現するためには早期に専門家に相談しながら十分な検討の下で計画的に株式の移動を進めつつ、公平な分配のための原資を準備する必要があります。

 

(1)株式管理状況の確認

 

まずは株式管理の徹底です。

中小企業では株券発行会社であるのに株券が未発行、発行されてはいるが株主名簿未整備ということもめずらしくなく、このような状況では相続による世代交代が進むうちに誰が株主なのか把握できなくなる恐れがあります。

そこで現経営者が健在であるうちに株式管理体制を確立させ、後継者に順次株式を移転しながら支配力強化のための種類株式の発行といった施策を巡らせることになります。

 

(2)現経営者自身が分配の原資を準備する

一方、遺留分対策としては、他の相続人らに遺言等を通じて遺留分を主張しないように伝えるという方法もありますが、やはり効果的なのは利益の提供です。

自社株式以外に目ぼしい財産がない場合には後継者となる相続人に株式を買い取ってもらい、得た代金を遺留分行使しない見返りとして遺留分権利者に与えることで遺留分リスクを回避します。

ただし、この方法は後継者に株式を買い取る資金力がある場合に限られるでしょう。

 

(3)後継者ために遺留分侵害額を準備する

相続開始後に後継者が侵害額の支払を迫られた場合の原資にあてるため、後継者を受取人とする生命保険を利用することも有益です。

ただし、この方法では相続人の間に強い不公平感が生じやすいため、他の方法で公平な分配を実現できないか慎重に検討すべきです。

 

(4)後継者の遺留分負担を軽くする

相続による事業承継について次に紹介する民法特例を利用すれば遺留分を減らすことが可能になります。

これにより相続財産の会社留保だけでなく株式の分散防止も可能になるなど、後継者が安心して事業を承継できるでしょう。

 

3 経営承継円滑化法による民法特例

経営承継円滑化法に基づく特例により、特例中小企業者の現経営者が後継者に対して自社株式等を贈与した場合において、推定相続人全員で次の2種類の合意をすることができます。

 

(1)除外合意

生前贈与株式等を遺留分の対象から除外する合意です。

後継者が現経営者からの贈与により取得した株式や事業用地等の財産は、その贈与が相続開始前の10年間に行われたものについては、「特別受益」として遺留分算定基礎財産に算入した上で遺留分侵害額請求の対象となるのが原則です(1044条3項)。

しかし当該財産を除外合意の対象とすれば基礎財産に算入されずに済み、遺留分侵害額請求の対象にもなりません。

とくに株式について合意すれば相続に伴う分散を防止することができるでしょう。

 

(2)固定合意

生前贈与した財産の評価額をあらかじめ固定する合意です。

生前贈与により取得した財産を遺留分算定基礎財産に算入する際、その評価額は相続開始を基準とします。

たとえば贈与時に3000万円であった自社株式の価値が相続開始時には1億円に上昇していた場合、その価値上昇が後継者の努力によるものであったとしても、上昇後の1億円が算定基礎財産として算入されてしまいます。

これに対して当該株式を固定合意の対象とすれば基礎財産算入額は3000万円となり、価額上昇分7000万円は算入されないことになります。

その結果相続開始時までに株式等の価値が上昇しても他の相続人の遺留分額が増大することはなく、後継者は企業価値のさらなる向上をめざして経営に専念することができるようになります。

 

(3)要件

民法特例が適用されるには以下の要件を満たす必要があります。

 

会社 3年以上継続して事業を行っている中小企業
現経営者 過去又は合意時点で代表者であること
後継者 ・合意時点で現代表者であること
・現経営者から株式等の贈与を受けた結果、議決権の過半数を保有していること(既に過半数を有している後継者が株式の贈与を受けた場合は非該当)

 

(4)手続

遺留分に関する民法の特例を利用するための手続きは次の通りです。

 

現経営者が推定相続人に対し株式等を贈与

推定相続人全員が書面により合意(除外合意/固定合意/双方組合せ)

経済産業大臣に対して確認申請し、確認書を取得

確認証明書を添付して、家庭裁判所へ許可の申立

 

詳しくは当事務所にお問い合わせ下さい。


相続問題は
山本安志法律事務所にお任せください。

0120-150-833

[受付時間] 平日 9:30 ~ 19:00

メール予約も受付中
初回1時間相談無料

経験豊富な弁護士が、問題解決までワンストップでサポートします!